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事例研究・コラム

Vol.23 上場企業における『不祥事予防のプリンシプル』

                    
NEOS-Basic

 日本取引所グループ(JPX)の日本取引所自主規制法人は、2018年2月に『上場会社における不祥事予防のプリンシプル(案)』を策定した。これは、近年不祥事が多く発生している実状を踏まえ、上場する企業に対して、事前の予防に向けた取組みと、コンプライアンスに関する自己規律を求めたものだ。既に策定された『不祥事対応のプリンシプル』(2016年2月)では、発生してしまった不祥事への対処方法として、「根本的な原因の解明」や「再発防止策の策定」、「迅速かつ的確な情報開示」などが取りまとめられたが、今回のものは不祥事の予防に重きが置かれており、上場企業に事前・事後の両面から、より実効性の高い取組みを促している。

 今回策定されたプリンシプル(案)には、以下の6つの原則が記されており、それぞれにおける経営トップの関与が重要とも付け添えられている。



 コンプライアンスの取組みについては、規程やマニュアルの策定からコンプライアンス教育の実施、内部通報制度の充実などの施策が既になされており、次の一手を模索する企業も多い。岡本・鎌田(2006)の研究では、マニュアルなどの命令系統の整備は、着服や情報漏洩などの「個人的不正」を防ぐ効果はあるものの、品質偽装などの「組織的不正」の防止には直接の効果が見られないことを明らかにし、属人風土こそがその要因となることを指摘した。コンプライアンス違反は、「個人的不正」と「組織的不正」の2種に大別できるが、昨今聞かれる不祥事は「組織的不正」に関するものが多いように思われる。これを防ぐためには、単に社内のコンプライアンス制度を整えるだけでは不十分であり、それが職場でどの程度定着し、日々の行動に浸透しているかを確認する必要がある。

 そのためには、原則①にも明記されている通り、コンプライアンスの状況について、「制度と実態の両面を正確に把握する」ことが第一歩となる。当社のコンプライアンス意識調査では、単にコンプライアンス風土の醸成の程度や違反の有無の把握に止まらず、その要因となる職場の実態について、上司のマネジメント行動や葛藤場面における行動選択などを測定している。調査の対象範囲についても、グループ会社を含めて実施するケースが多く、各社の実態を客観的に把握するツールとして、多くの企業で導入いただいている。

 不祥事の発生率を0%とすることはできないが、その芽となりうるリスクを掴んでおくことは、発生確率を抑えられるだけでなく、万が一起こってしまった際の影響を最小限に留めることも繋がる。社内のコンプライアンス意識を高めるための近道などはなく、現場⇔経営陣が双方向にコミュニケーションを重ね、それぞれの立場で地道に取り組み続けなければならない。コンプライアンス意識調査は、その手助けとなるツールの一つに過ぎないが、有効な手段であることは間違いない。


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株式会社日本経営協会総合研究所 研究員 吉川 和宏

【経歴】
大学卒業後、金融機関勤務を経て、(株)日本経営協会総合研究所入社。現在は、主に従業員意識調査およびコンプライアンス意識調査を担当。調査から得られる数値情報を基に、各企業の組織改善のための指導・支援を行っている。産業カウンセラー。

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