全従業員対象の定量のデータから、活力ある組織に向けた本質的な課題を抽出します。
事例研究・コラム

Vol.12 遠慮なく言い合う

                    
NEOS-Basic

 前回は、職場におけるコンプライアンス意識の醸成において、コミュニケーションの果たす役割の重要性を紹介した。上司⇔部下間もしくはメンバー間のコミュニケーションが機能している職場では、仮にコンプライアンス違反に繋がりかねない事象に遭遇した場合でも、職場内に相談できる上司や同僚がいるため、結果として問題の早期発見や適切な対応をとることができるというものである。そこで今回は、前回詳しく紹介することができなかった「遠慮なく言い合う」という項目について取り上げてみたい。

 意識調査の中には、いくつかコミュニケーションに関する項目があり、その中で「遠慮なく言い合う」では、「お互いに自分の意見や思っていることを遠慮なく言い合っているかどうか」を問うている。各社の調査結果をみると、スコアはやや低い傾向にあるところが多く、このようなコミュニケーションがきちんと機能している職場はまだまだ少ないのが実情である。ところで、これを読まれている方の中には、「遠慮なく言い合う」が仮に機能していなくても、日常業務において特に支障はないように思う方もいるのではないだろうか。
 
 本項目は『職場の相互の信頼感』という分野に属しているのだが、同じ組織(職場)で働く者として、自身の意見を言わなければならないことや、きちんと伝えなければならない場面に遭遇する機会はある。その際、発言を躊躇したり、何も言わないという行動をとることは、互いの信頼関係が築けないだけでなく、周囲に対する関心の低下にも繋がりかねず、健全な組織運営という観点においても課題があるものと思われる。
 
 また、組織の中には職位や所属、職種、年代、性別など、さまざまな属性があり、これらの区分の違いによって、互いの意思疎通がうまくいかないことはよくある。例えば、部下から上司への下意上達や営業と開発の情報共有がうまく機能しないなどはよく聞く話である。この点において、属性の違いがコミュニケーションの阻害要因の一つとも言えるのだが、この背景には「遠慮」や「言っても理解してもらえない」などの心理も少なからず働いているようだ。

 このように、「遠慮なく言い合える」状態をつくることは、単にメンバー相互の信頼関係を築くためだけでなく、健全な組織運営と組織活性化という点においても必要と言える。もちろん、自分の意見や思っていることが言い合えるためには、経営層や現場の管理職が積極的に職場の雰囲気づくりに関与し、自らも行動で示すことが求められる。表面的な“仲良しクラブ”ではない組織づくりの第一歩として、取り組む価値は十分あるのではないだろうか。


株式会社日本経営協会総合研究所 研究員 吉川 和宏

【経歴】
大学卒業後、金融機関勤務を経て、(株)日本経営協会総合研究所入社。現在は、主に従業員意識調査およびコンプライアンス意識調査を担当。調査から得られる数値情報を基に、各企業の組織改善のための指導・支援を行っている。産業カウンセラー。

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