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事例研究・コラム

第3回 コミットメントが組織を強くするのは本当か?

                    
NEOS-Basic

■組織コミットメントとは

組織コミットメントとは、『従業員が自分の属する組織に対して、その一員であることを肯定的に自覚している意識状態』のことを言い、一般的には業績や職務満足、会社満足に肯定的な影響を与えると考えられている。※1
特に雇用市場の流動化が進んだ現代では、いわゆる『日本型雇用慣行』である終身雇用は鳴りを潜め、中途採用者の増加が進んでいるなか、企業DNAの継承といった観点からも、組織コミットメントへ大きな注目が寄せられている。また一方で、特に近年世間をにぎわせている企業不祥事との関連で、組織コミットメントの『負の側面』も捉えられるようになってきた。


■組織コミットメントを捉える際の注意点

これまでの日本市場では、高度経済成長期などの日本研究から、上記のような日本型雇用慣行が、その拡大に大きな影響を与えたと考えられ、例えば「会社への忠誠心」や「帰属意識」などの言葉に表されるように、その代表的なイシューとして組織コミットメントが語られてきた。こうした日本研究の第一人者であるアベグレンは、『日本に大切なのは、個人主義ではなく組織への帰属意識である』との言葉で、日本企業に与える組織コミットメントの肯定的側面を強く認識している。一方、小説家の夏目漱石は著書の中で、『集団とか国家の為には、人は平気でウソをつくし人を騙したりする。集団の倫理は個人の倫理より質的に劣る』とし、特に『負の側面』からの指摘を加えている事には注意したい。  このようにして考えると、組織コミットメントは不変的なものとして、また、一元的なものとして捉える事には注意が必要であると思われる。

■組織コミットメントの他次元性

組織コミットメントは、これまでの蓄積研究から、①愛着的コミットメントと、②存続的コミットメントの2側面から考えられる事が多い。※2 


これら2つの組織コミットメントは、その先行要因と影響を与える要因にそれぞれ違いがある事が理解できる。


すなわち、組織に対する愛着的コミットメントの醸成こそが、組織に肯定的影響を与えるコミットメントであり、そのコミットメントを醸成するには、①上司のサポートやリーダーシップ、②処遇などの公平感、③会社ビジョンの適切さ、④能力の開発機会、⑤仕事目標の明確化などが先行要因として考えられる。そしてこれらの要素を、いかに連動性を持って行えるかが、組織力向上のための重要なポイントとなるのではないだろうか。


※1 学問的定義『①組織の目標や価値に対する信頼と受容、②組織の代表として進んで努力する意欲、③組織の一員としてとどまりたいとする強い願望、によって特徴づけられる、組織への同一視や関与の相対的強さ」(Mowday, Steers & Poter, 1979)
※2 研究者によっては、上記2つに加えて、規範的コミットメント(理屈抜きに、組織にはコミットすべきである)を提唱する者もいる。

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(株)日本経営協会総合研究所 主席研究員 加藤 理

(株)日本経営協会総合研究所 主席研究員 加藤 理

慶応義塾大学経済学部卒、慶應義塾大学大学院社会学研究科修士課程修了(産業・組織心理学専攻)後、2002年に入社。現在、組織行動部門主席研究員として、多変量解析を用いた意識調査結果の分析や“現場”に赴いてのフィールドワークから、現場の接点と経営の視点のマッチング=人と組織のパフォーマンス最適化に向けた指導・支援を行なっている。

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